波打ち帯の水理 波打ち帯の水理

 波が打ちては引き返す波打ち帯は、私たちが海岸を散歩する時に観察できる親しみのある空間であるが、 漂砂を含めたその水理は意外に難しい。その理由の一つは、波の遡上・流下に伴って没水・干出を繰り返 すため、静水深を中心に水位が変動するという通常の波動理論の取扱いが出来ない点にある。
 波打ち帯は漂砂の活発な領域でもある。暴浪時には前浜が大きく侵食されるが、その地形変化の特性を記 述する上でも、波打ち帯の水理機構・漂砂機構の解明が不可欠である。波打ち帯の支配外力は風波ではな く、うねりや風波自身が沖から岸へと伝搬する過程で誘起される長周期波である。こうした観点で見れば、 波打ち帯で起こっている現象は、実は砕波帯や沖波帯を含めた全体系の中の局所的な具現化であり、 全沿岸域の地形変動の中での陸と岸の境界で現れている地形変動と捉えることができる。
 背後の地下水の水位変動が波打ち帯の漂砂と地形変化に少なからぬ影響を与えることを考えれば、 海から陸へと視点を広げる必要もある。こうした魅力的な領域に対する研究を10年以上にわたって行っている。